良かれと思った「補強」が爪を壊す?野球少年の母が知っておくべき落とし穴
「息子の爪が割れた!次の試合までに何とかしてあげなきゃ……」 そう思って、市販の補強コートを塗ったり、近所のネイルサロンへ駆け込もうとしているお母さん。ちょっと待ってください。
今の保護者世代にとってネイルサロンは身近な存在ですが、実は、野球(特にピッチャー)の指先には、一般的なネイルの常識が通用しない「恐ろしい盲点」があるのです。
1. 市販の「補強マニキュア」が招く乾燥の罠
まず多くの方が試すのが、ドラッグストアなどで買える「補強用マニキュア」です。手軽ですが、ここにはスポーツ特有の大きな落とし穴があります。
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「硬さ」の弱点: 厚みを出すために二度、三度と塗り重ねると、マニキュアはパリパリに硬くなります。すると投球時の凄まじい「しなり」についていけず、一番大事な先端からポロポロと欠けてしまいます。トラブルが起きやすい先端側が結局は無防備になってしまい、補強の意味をほとんど成していません。
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「除光液」のダメージ: 剥げたら塗り直す。その時に使う「除光液」が実は大敵です。水分と油分を強力に奪うため、保湿ケアがないまま繰り返すと、爪はどんどん「乾燥した竹」のように、脆く割れやすくなってしまいます。
2. ネイルサロンの「一般的」は、野球の「非常識」
マニキュアでダメならサロンへ、と相談すると一般的に以下の2つの方法が提案されます。
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アクリル: 歯の詰め物と同じ硬さの人工爪
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シルク+ジェル: 布を貼り付けてジェルで固める補強
これらはスマホ操作や家事といった「日常生活」には最適な強度です。しかし、100km/hを超える球を投げるピッチャーの指先にとっては、これが逆に爪をボロボロにする原因になります。

3. なぜ「硬い補強」が毒になるのか
その理由は、ピッチャー特有の爪の「しなり」にあります。
ボールをリリースする瞬間、爪は凄まじい圧力を受け、衝撃を逃がそうと弓のようにしなります。しかし、アクリルやシルクで固めた部分は、カチカチに固まった「板」のような状態です。
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自爪: ぐにゃっと曲がって力を逃がしたい
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補強材: 1ミリもしならない
この反発が起きた瞬間、補強材は自爪の表面(層)をベリッと道連れにして剥がれます。良かれと思って補強したはずが、結果として「自爪を剥ぎ取り、爪を薄くしてしまう」のです。
4. 現場で繰り返される「悲劇のループ」
恐ろしいのは施術したネイリストもお母さんも、この事実を知らないことです。 お店では綺麗に仕上がるのでみんな安心します。でも実際に爪が悲鳴を上げるのは「マウンドの上」。
「投げたらすぐ剥がれた」となっても、選手が同じ場所に戻ることは稀なため、ネイリストは自分の施術が選手を傷つけたことに気づかず、また別の子に同じことを繰り返してしまいます。 こうして「良かれと思って」行った処置が、選手の爪をどんどん追い詰めていくのです。
(次回の後編へ続く:次は、薄くなった爪に襲いかかる「横割れ」より10倍厄介なトラブルについて解説します)